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創成化学工学実験 10班

9班ポスター

 

1. 動機と構想

高専祭にて一般のお客様に実験内容を発表するとのことだったので、ただ行なった実験結果を見ていただくだけではなく実際に体験でき、かつ身近なもので簡単に行える実験で、化学という分野に興味を持っていただきたいと考えていた。

身近なものとして最初に思い浮かんだのが、大半の人が一日一回は手にするだろうペンだった。ペンを使った実験といえば、一関高専の体験入学でおなじみのペーパークロマトグラフィーだったが、体験入学では説明や実験を見聞きするのみで実際に触って体験できるものではなかった。そこで我々の班ではクロマトアートとして、来場されたお客様にろ紙に模様を描いて展開していただくようにした。これによりお客様自身が実験に参加することで原理へのより深い理解が得られ、我々のテーマである身近なもので化学に興味を持ってもらうことを目指した。

 

2. 原理

図1. 固定相中での各成分の分離  ・クロマトグラフィー

固定相の表面または内部を移動相が通り抜ける過程で固定相の物質と移動相内の物質、つまり溶質の間で生じる相互作用を利用して異なる性質の溶質を分離する。固定相との相互作用が弱い物質はすぐに溶出し移動するが、相互作用が強い物質は固定相に長い時間保持される。相互作用の大きさの違いによる、原点からの距離、固定相からの溶出時間の違いから各成分が分離される。(図1.)

 

・クロマトアート

クロマトグラフィーの分離の原理を利用して、カラーの水性サインペンのインクに含まれる色素の分離を行った。

 

3. 実験

  • 使用器具、物品
    <検討に用いたもの>

    紙(ろ紙 障子紙)、メスシリンダー、ビーカー、ガラス棒、駒込ピペット、水性サインペン(①ぺんてるサインペン、②ぺんてるかきかたフェルトペン、③プラチナ水性マーカー、④PERMANENT MAKER)、シャーレ

     

    <クロマトアート>

    紙(コーヒーフィルタなど)、水性サインペン(ぺんてるサインペンが好ましい)、容器(紙の形状によってはキャップなどでも可)、水

     

  • 試薬

    メタノール、アンモニア水、1-ブタノール、消毒用エタノール、WILKINSON、炭酸水素ナトリウム溶液

     

  • 手順
    <行った実験>
    1. 展開させる紙の下端から 1 cmのところにペンで 2 ㎜程度の印をつけた。
    2. ビーカーに展開溶媒を少量入れた。
    3. 展開溶媒に1.の紙を入れた。
    4. 展開の様子の観察を行った。
    5. 紙の7 割程度まで展開溶媒が吸い上がったところで取り出し、乾燥させた。

    これを4種類のペンで行った。また、条件を変えるため展開溶媒を水、炭酸水、炭酸水素ナトリウム溶液、1-ブタノール・メタノール・アンモニア水・水( 4 : 1 : 1 : 1 )の混合溶液の4 種類、展開させる紙をろ紙、障子紙の2 種類で実験を行い、得られた結果を比較した。

     

    <クロマトアート>
    1. 展開させる紙にサインペンで模様を描く。
    2. 容器に水を入れる。
    3. ペンで模様を描いたところに水がつかないように注意しながら紙を水に入れる。
    4. ある程度水を吸い上げたところで紙を水からあげ、乾燥させる。

     

    ※ひだろ紙の折り方
    丸型のろ紙を用意した際に使える折り方を紹介する。
    1. ろ紙を4 つに折って2 つのひだを袋状に折り込むと4 つのひだができる。
    2. 同様にできた4 つのひだをそれぞれ折り込み8 つのひだにする。
    3. さらに同じことを繰り返し16 のひだを作る。
    4. 形を整える。

    これでひだ折ろ紙は完成する。ろ紙の中心に水をつけると、放射状にインクが展開する。

 

3. 実験

  • ペンの違い

    ②と③のペンはどの溶媒を用いても黒しか発色しなかった。①と④のペンは黒以外の色が発色したが、展開溶媒によって異なる展開の様子を見せた。

    ①のペンは混合溶液を展開溶媒として実験を行った結果、原点から赤、橙、黄、緑、青、紫の順に展開したが、水を用いたときは原点から黒紫、橙、紺の順に展開した。

  • 展開溶媒の違い

    水と炭酸水、炭酸水素ナトリウム溶液での展開はほぼ同じ展開の仕方をした。

    また、消毒用エタノールと混合溶液でも似たような展開の仕方をした。

    水と展開溶媒を比べたところ発色する順番が異なっていた。また、紙が吸いあがる速度は水が最も速かった。

  • 展開させる紙の違い

    ろ紙は障子紙に比べ、どの展開溶媒を用いても紙の7 割程度まで吸いあがるのにだいぶ時間がかかった。

  • Rf値の計算

    まずRf値とは、クロマトグラフィーにおける物質の移動比のことである。図2.の結果から、それぞれの色のRf値を計算し、比較する。

    Rf値は(原点から各物質の移動距離)/(原点から溶媒が吸いあがった距離)で求められる。

    ①ぺんてるサインペン

    ・純水の場合
    黒:4.0 cm / 6.9 cm = 0.58
    橙:5.0 cm / 6.9 cm = 0.72
    青:6.9 cm / 6.9 cm = 1.0

    ・混合溶液の場合
    黒:1.5 cm / 5.5 cm = 0.27
    橙:2.0 cm / 5.5 cm = 0.36
    青:3.7 cm / 5.5 cm = 0.67
    紫:5.5 cm / 5.5 cm = 1.0
      ①ぺんてるサインペン
     

    ②ぺんてるかきかたフェルトペン

    ・純水の場合
    黒:6.5 cm / 6.5 cm = 1.0

    ・混合溶液の場合
    黒:1.0 cm / 5.6 cm = 0.18
      ②ぺんてるかきかたフェルトペン

    ③プラチナ水性マーカー

    ・純水の場合
    黒:6.7 cm / 6.7 cm = 1.0

    ・混合溶液の場合
    黒:0.2 cm / 5.5 cm = 0.036
      ③プラチナ水性マーカー

    ④PERMANENT MAKER

    ・純水の場合
    桃:4.0 cm / 6.9 cm = 0.58
    紫:4.3 cm / 6.9 cm = 0.62
    緑:6.5 cm / 6.9 cm = 0.94
    青:6.9 cm / 6.9 cm = 1.0

    ・混合溶液の場合
    黄:0.6 cm / 5.5 cm = 0.11
    水:2.0 cm / 5.5 cm = 0.36
    青:3.5 cm / 5.5 cm = 0.63
    桃:4.6 cm / 5.5 cm = 0.84
    紫:5.5 cm / 5.5 cm = 1.0
      ④PERMANENT MAKER

     

    5. 考察

    • 同じ黒のインクでもペンによって展開の様子が異なったのはそれぞれのペンの黒色を構成する色が異なるためであると考察する。
    • 水を用いた時と混合溶液を用いたときで展開する色の順が異なったのは極性の違いによるものだと考察する。①のペンで混合溶液を用いたときに紫色は原点から一番遠いところまで移動したが、水を用いたときは原点に最も近い位置にある。このことから、①のペンに含まれている紫色は極性が低いということが考えられる。
    • 溶媒が吸いあがる速度が異なった理由として、溶媒の分子量と展開させた紙の密度、そして液体の粘度が関係していると考察する。水と混合溶液の分子量を比較すると、水のほうが圧倒的に小さいため、密度が高いろ紙でもその隙間を通り抜けることができるが、分子量の大きい物質を含む混合溶液は紙の内部を通過できなかったのではないかと考える。また20 ℃の時、水の粘度は1.003 mPa・sであるが1-ブタノールは3.0 mPa・s、アンモニア水は0.115 mPa・s、メタノールは0.62mPa・sである。水のみで展開した時と混合溶液で展開した時とで時間が大きく異なったのは、混合溶液中の1‐ブタノールが関係しているのではないかと推測する。
    • Rf値について、同じ色でも移動比が異なっていたのは極性と性質の違いによるものだと推測する。また、移動比が1.0となっているものは紙の長さが足りなかったため十分に展開されなかったものと考える。

     

    5. 考察

    • 高専祭で来ていただいたお客様に喜んでいただけてよかった。また、そんな内容にできてよかった。
    • 「報告・連絡・相談」が大事だということはわかっていたが実験を通して実感でき、改めて重要性を知る良い機会だった。
    • 高専祭を通して、コミュニケーション能力を向上できた。良い経験ができ、とても楽しかった。
    • 自分たちで内容を決めて実験し発表する、ということに不安はあったが無事に終えることができてよかった。また、目的としていた「身近なもので実験を行い、化学に興味を持ってもらう」も達成できたと思う。

     

    7. 参考文献

     

    8. 高専祭の様子

     
     
     

     

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