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H27 創成化学工学実験 2班

2班

 

1. 背景と目的

4 年前に発生した東日本大震災に伴う福島第一原発事故により、いまだに放射線に関する報道に対して多くの人たちが敏感に反応してしまっている。そこで、自分たちは霧箱により身近にある物を線源として用い、お客さんの中の放射線に関する認識を変えることを目的として実験づくりを行なった。

 

2. 原理

放射線は波長が非常に小さな光や原子核や電子といった粒子であるため、目視することが不可能である。そのような放射線を飛跡として間接的に観察する装置が霧箱である。

 

霧箱の中の条件としては箱の中は過飽和状態の極性溶媒 ( 一般的にエタノール ) の蒸気と空気が存在している。そこに放射線が入射することで以下の現象が起こる。( 図 1 )

 

① 放射線が空気分子と衝突 → 電子をがはじき出る。
② 空気分子が正に帯電。
③ 過飽和のエタノールが帯電した空気に集まり液化 → 線状の霧になる。

 

この霧が放射線の飛跡である。

 

過飽和状態でなければ放射線の飛跡を観察することができない。過飽和状態とは、飽和蒸気圧以上に蒸気が存在する状態であり、凝結核となる物質が存在したりや衝撃が与えられたりすると解消する。霧箱における過飽和状態の蒸気の凝結核となるのは上記に示した通りで正の電荷をもった空気分子である。

過飽和状態を作り出す方法としては静的な方法と動的な方法の2つがある。静的な方法では気体の拡散を利用し、動的な方法では気体の断熱膨張を利用する。本実験では、静的な方法により過飽和状態を作り出す方式の霧箱であり、一般的に拡散霧箱と呼ばれているものである。

 

 

  1. アクリル板 ( 20 cm * 20 cm * 15 cm 天井なし ) を用意する。
  2. 発砲スチロールにドライアイスを入れてその上にアクリル板を置いて底を冷やす。
  3. アクリル板に必要なものを入れる。(・黒い紙(線を見やすくする)・水準器(蒸気の偏りをなくすため水平にする) ・エタノールを入れた容器 ・段ボールの壁(一面は空けておく) ・脱脂綿のカーテン
  4. 段ボールと脱脂綿にエタノールをしみこませる。
  5. 天井をラップで密閉して、溶接棒を刺して立てる。
  6. 10 分ほど過飽和になるのを待つ。必要ならばドライアーで天井を暖めて上下の温度差を作る。
  7. 段ボールのない一面から光を当てると線源の周りから霧が出る。
  8. しばらく時間がたつと底が濡れて過飽和ではなくなるので底を拭き、空気を入れ替えまた過飽和になるのを待つ。

 

3. 工夫

  1. 最初は隙間テープにアルコールをしみ込ませ、さらに箱の底をアルコールで浸していた。しかし、それではアルコールの量が足りず過飽和状態にはならなかった。そこで、隙間テープの使用をやめ、段ボールで箱の側面を覆いアルコールをしみこませた。また、箱の底にはアルコールを入れた容器を設置した。その結果、箱内は過飽和状態になった。
  2. 箱の底を冷やすだけで温度差を作るのではなく、箱の上部をドライヤーで温めることで温度勾配をより大きくした。
  3. 霧箱を水平にすることで、過飽和状態のアルコールが偏りなく均一になるようにした。
  4. 線源は、当初構内の放射線量の高い場所のコケや、バナナなど身近にあるものを使用する予定だった。しかし、コケやバナナでは放射線量が低く霧箱で観測できなかった。次に、コケよりは放射線量が高いであろうラジウムボールを使用したが上手くいかなかった。そこで実習工場にあるトリウム入り溶接棒を使用したところ、はっきりと放射線の飛跡を観測することが出来た。

 

4. 結果

最終的に行なった霧箱実験の条件は

  1. 霧箱内の側面の段ボールにアルコールをしみ込ませる。
  2. 霧箱の底は水平にし、アルコールのプールを設置する。
  3. 箱の上部はドライヤーで暖め、下部はドライアイスで冷やす。
  4. 線源はトリウム入り溶接棒を使用する。

 

であった。以上を満たすと、放射線の軌跡を鮮明に観測できることがわかった。

 

図 3 試行錯誤の間に使用した霧箱

左:握りこぶし程度の大きさ

中:底面 10 cm × 10 cm 高さ6 cm

右:中学生の体験講習で JAXA からもらったもの

 

図 4 ガイガーカウンター(私物)

 

5. 感想

  • 簡単だと思っていた実験が実は奥が深くて難しく、テーマを変えようと挫折しそうになった時もありましたが、諦めずに実験を続けて良かった。実際にお客さんを目の前にしてプレゼンするのは緊張したが、お客さんが興味深そうに話を聞いている様子を見て、嬉しく思った。
  • バナナの皮や苔など身の回りにあるものから出る非常に弱い放射線の飛跡を見ることが当初の目的であったが、実験条件を整えるまでに班員が一丸となって、作業に様々な検討を行うことができ内容としては充実していたと思う。この科目で学び経験したことを卒研や就活等の様々な場面で今後活かしていきたいと思う。
  • 途中まで全く前進しなくて諦めかけたが、ギリギリのところで成功して良かった。
  • 初めは上手くいかずにテーマを変えようと思ったこともあったが、みんなで検討して最後には安定して、飛跡が見られるような霧箱が出来て良かった。
  • 今回の創成化学工学実験を通して協力すること、結果を追い求めることを学び、たくさんの人の前でプレゼンするという経験が得られた。高専祭での発表を終えて全員が「やってよかった」と思える実験になって良かった。

 


6. 参考サイト

 

7. 高専祭の様子

 
 

 

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